2012年12月15日土曜日

英語学習と自己投資について考える

先日、橋下徹大阪市長の九州での演説を聞いていたら、日本人は中学校から大学まで10年間英語を勉強しても、話せるのは”Good Morning”だけなどと冗談を言って聴衆を笑わせていました。さすがに”Good Morning”しか話せないということはないでしょうが、現在の英語教育は、10年間英語を勉強しても、自分の言いたいことがほとんど話せないというのが現実ではないかと思います。

英語を話せなくてもいい環境にいるということが一つと、人間は必要に迫らせないと言語を本気で勉強するのは難しいということがあるのかもしれません。

一番効果的なのは、自分を英語しか通じない場所に置くことですが、経済的、時間的な問題があってなかなかできない方が多いのではないでしょうか。幸運なことに、今はパソコンで世界中の人といつでもどこでも話せる環境にあります。それを利用しない手はないでしょう。

今日は、英語学習と自己投資についてとても理論的にかかれたエッセーを紹介します。著者は、カナダのモントリオールにあるラヴァル大学文学部日本語科主任溝江 達英(みぞえ たつひで)先生です。
 
CNNに広告を出しているRosettaStoneの宣伝ですが、英語を勉強しようとしている人にとってとても役立つ内容だと思ったので、紹介させていただきました。 


数字でみる英語

私が住んでいるカナダ・モントリオールは、英仏バイリンガルの都市である。ただ都市部を離れると、フランス語色がより一層強くなる。世界的に知られるカナダの歌姫、セリーヌ・ディオンはモントリオール近郊のフランス語地域に生まれた。意外と思われるかも知れないが、彼女の母語はフランス語で、生まれながらの英仏バイリンガルではない。英語は21歳になってから本格的に勉強し、わずか1年足らずでマスターし、22歳で英語のデビューアルバムを出した。英語で歌うことで、どんどん知名度を上げて行き、結果的には非英語圏の日本でもブームを築いた。英語が影響力の武器になっているとはまさにこのようなことである。



英語を母語にしている人は、4億人程度、英語を外国語として理解できる人の数は概算で14億人強いると言われる。そうなると、英語でコミュニケーション可能な人が累計で18億人強いるわけだ。つまり、我々の住む世界の4人に1人が英語を使える計算になる。事実、この記事を読んでいるあなた本人か、あなたの友達に、英語と関わりを持っている人がいるはずだ。情報発信がFacebookやツイッター、YouTubeを介してできる時代になった今、英語で情報発信すれば、通用度の高い言語なだけに、世界に自分のコンテンツを速く広く伝えられる。どんなに中身の素晴らしいコンテンツであっても、日本語での発信であれば、日本語が影響の及ぶ範囲内だけの拡散力しか今のところ望めない。広く情報を発信したいのであれば、やはり英語が必要となってくる。

英語学習と付加価値

情報伝達のスピードが速い世の中で、その伝達スピードと拡散を助ける英語と、今後どう向き合っていくべきなのか。

昔はネイティブスピーカーから英語を学ぼうと思えば、英会話学校を真っ先に探したものだが、今は状況が変わってきている。インターネットなどの発達により、オンラインでネイティブスピーカーとつながれば、一歩も外に出ることも無く、自宅での英会話学習が可能となったのだ。

こうして思いついた願いがすぐに叶ってしまう世の中になると、手間が省けるだけでは物足りなくなり、どうしても、【手間が省けることで生まれる相乗効果】も考えるようになってくる。特に、バブル期と違って、景気低迷にあえぐ日本では、時間の節約に加えて、無駄なお金は使えないという節約のマインドが消費行動に反映される。最安で最短で最大限の効果を合言葉に、費用対効果の追求が激しさを増している。
事実、昔ならば、欲しい商品があればお店で購入していたが、最近は、お目当ての商品をまずお店で下見してから、ネットで同じものを探して購入する人が増えているというのだ。そこには消費者心理のお得感をくすぐる様々な仕掛けがある。ネット購入ならば、時間を選ばずに買い物ができる。荷物を店舗から運ばなくてもいい。ポイントが貯まる。買いにくい商品もこっそり買えるなどその人その人にお得な理由付けがある。欲しいものをお得に手に入れるのは当たり前で、そこに更にプラスのおまけもなければ満足しにくいマインドになっているのだ。

英語学習も同様の付加価値が求められている。オンラインであれば、自分の時間割を組んで勉強できる。学習履歴が自動バックアップされるので、時間が十分に取れなくてレッスンを途中で中断しても、次回は中断した箇所から続けられる、といった時間の節約が可能である。その上、お気に入りの先生を選べるところも増えている。難しい箇所は分かるまでなんども繰り返すこともできる。さらに、オンライン辞書にアクセスでき、その場で分からないことも、他人の目を気にせず納得するまで調べられる。もちろん、移動時間も無ければ、教室までの電車賃もかからず、どしゃぶりだろうが、大雪だろうが、天候に左右されることなく、学習環境が保たれ、継続できる。従来の英会話教室では得られない自由な選択肢が揃っている。しかも授業料もお手頃で授業のクオリティーも高い。断る理由が見つけにくいほど、オンライン学習は進化を続けているのが現状だ。
順序と環境

どんなに早く手軽に情報が得られようとも、その情報を下地にアクションを起こさなければ、せっかくのいい情報も生きてこない。オンライン英語学習をコストパフォーマンス的にも優れていると選択しても、それをどう使っていくかの作戦がへなちょこでは得られる効果も期待薄だ。戦える武器を持っても、正しい戦い方を知らねば、負けてしまう。できるならば短期決戦に持ち込み、さっさと終わらせてしまいたい。

最初に例として挙げたセリーヌ・ディオンは、世界デビューに打って出ていくのに英語を武器に選んだ。21歳の時に翌年の22歳の時には英語のアルバムを出すという明確な見取り図を描いて、一年という短期決戦で目標を遂げた。

大工は無駄に釘を打たない。という言葉がある。

大工は家を建てる時に、まずは設計図を描く。出来上がる家の全体像を先に明確にイメージしてから、そこから土台を作り、コツコツと順序よく、積み上げ式に家を形にしていく。積み上げの順番を組む時は完成形から逆算してはじめれば無駄な釘打ちは無い。とにかく完成形を初めに決めて、正しい努力をする。この順番が大事なのだ。

どこに自分の果たしたい夢が届くべきなのか、その夢の到着地を先に決めてから動き出すのだ。そうしないと今の努力は無駄な釘打ちになってしまうのだ。だから、まずは、英語を話すことでかなえられる自分の夢の到着地を決めることが大事なのだ。
夢の到着地を決めてから、2013年3月31日までの90日で勝負する。
正しい努力を順序良く行うには締め切りから逆算する手が一番効果的だ。もちろん、その前にどんな自分になりたいかセルフイメージしなければならない。通常、語学を習得するには、毎日コツコツ取り組んで1年くらいは計画しておきたいものだが、今回はわかりやすく、日本人にとって仕切りなおしが始まる「スタートの春」4月1日をゴールと位置づけてみよう。この「スタートの春」をどうスタートさせたいのかしっかり思い描くのだ。1月から3月末までは1月は31日、2月は28日、3月は31日と計算すると、きっちり90日ある。この90日で結果を出すと心に決めたとしよう。
費用対効果をベースに、英語学習を時間とお金の両面から見た投資として考える。目標設定はことごとく数学的に行ってみる。つまり宣言の全てに必ず数を入れる約束にする。数字は自分を客観視するのに役立つからだ。
例えば、英語学習を2013年1月1日から、月額15000円の投資を3ヶ月、3月31日まで続けるとする。総額45000円を90日で割ると、日割りで、英会話学習への投資額は500円。一日、ワンコインで英語が学び放題だということになる。見逃してはならないのは、スクールへの交通費と移動時間が節約できる。英語ができる人と出来ない人が年収レベルで200万違うというデータを参考にすると、1ヶ月あたり、200万円÷12ヶ月=約月額16万6千円の収入差が生まれる。この月額16万6千円の1割弱の投資、1万5千円はエビでタイを釣る投資方法だと言える。
「スタートの春」の4月には昇給試験を受けても良し、転職しても良し、海外と繋がれる輸出入販売に乗り出してもいいかも知れない。自分を客観的に管理する為に、何事にも語る言葉に数字を差し込みながらブレずに方向付けした通りに正しい努力を続ければ、あなたもセリーヌ・ディオンのように、英語を媒体として世界に打って出る人間になれるのかもしれない。

【著者紹介】
溝江 達英(みぞえ たつひで)
カナダ ラヴァル大学文学部日本語科主任 

早稲田大学第一文学部、一橋大学大学院言語社会研究科を経て、カナダ ラヴァル大学文学部言語学科博士課程修了。言語学博士(Ph.D) 英語スピーチコンテスト優勝経験を持つ。英語に加え、仏、独、西、伊、露語も堪能な言語学者である。

2012年11月8日木曜日

オバマの再選勝利スピーチ全文英語全文・和訳

オバマ大統領の再選勝利スピーチを英語の学習のために、一段落ずつ、英文とその和訳と交互に紹介します。冗談も交えながら、米国の子供を思う心、未来の米国のあり方を聴衆に真剣にうまく伝え、オバマって本当にいいスピーチをするなって感動しました。聴衆の心をつかむのがとても上手い。オバマは、いつも、スピーチだけは、上手なのです。日本にもこんなスピーチをする首相がいたら、日本人はもう少しは幸せになれたのではないかと思います。





It moves forward because of you. It moves forward because you reaffirmed the spirit that has triumphed over war and depression, the spirit that has lifted this country from the depths of despair to the great heights of hope, the belief that while each of us will pursue our own individual dreams, we are an American family and we rise or fall together as one nation and as one people.

皆さんのおかげで前へ進むことができます。戦争や恐慌に打ち勝った魂、そして、この国を深い絶望の淵から素晴らしい希望の高みへと引き上げてくれた精神、さらに、私たちが個々に個人の夢を追求する一方で、私たちはみな同じアメリカの家族であり、私たちは1つの国として、そして、1人の国民として一緒に浮き沈みするのだという信念を皆さんが再確認してくれたおかげで前進できます。

Tonight, in this election, you, the American people, reminded us that while our road has been hard, while our journey has been long, we have picked ourselves up, we have fought our way back, and we know in our hearts that for the United States of America the best is yet to come.

今宵、この選挙で、皆さんが、アメリカ人たちが、思い起こさせてくれました。私たちの旅路は辛く長いけれども、それでも私たちは気を取り直して、巻き返すために戦ってきたのだと。そしてアメリカ合衆国にとって最高の日々がこれからやってくるのを私たちは心の奥でわかっているのだと。

I want to thank every American who participated in this election, whether you voted for the very first time or waited in line for a very long time. By the way, we have to fix that. Whether you pounded the pavement or picked up the phone, whether you held an Obama sign or a Romney sign, you made your voice heard and you made a difference.

この選挙に参加した全てのアメリカ人に感謝します。初めて投票した方にも、投票するため長い間並んだ方にも。ちなみにこれは改善しなくてはいけません。あちこちの歩道を歩き回った人にも。電話をしてくれた人にも。オバマ支持の看板を持った人にも、ロムニーの看板を持った人にも。皆さんの声が届いて、変化がやってきたのです。


I just spoke with Gov. Romney and I congratulated him and Paul Ryan on a hard-fought campaign. We may have battled fiercely, but it’s only because we love this country deeply and we care so strongly about its future. From George to Lenore to their son Mitt, the Romney family has chosen to give back to America through public service and that is the legacy that we honor and applaud tonight. In the weeks ahead, I also look forward to sitting down with Gov. Romney to talk about where we can work together to move this country forward.

たった今、ロムニー知事と話をして、懸命に戦った選挙戦について知事とポール・ライアン氏に祝意を伝えました。私たちは激しく戦ったかもしれないけれども、それは、この国を深く愛し、この国の未来をとても大事に思っているからこそです。ロムニー家は、ジョージからレノア、そしてお二人の息子ミットに至るまで、公共への奉仕を通じてアメリカに恩返しをすることを選びました。それは、私たちが今晩、名誉に思い、称賛に値する伝統です。これから数週間先に、ロムニー知事と一緒に、この国を前進させるためにどこで協力できるかをじっくりと話し合うのを楽しみにしています。


I want to thank my friend and partner of the last four years, America’s happy warrior, the best vice president anybody could ever hope for, Joe Biden.

過去4年にわたり友人とパートナーでいてくれたアメリカの幸福な戦士、これ以上はないという最高の副大統領、ジョー・バイデン氏にも感謝します。


And I wouldn’t be the man I am today without the woman who agreed to marry me 20 years ago. Let me say this publicly: Michelle, I have never loved you more. I have never been prouder to watch the rest of America fall in love with you, too, as our nation’s first lady. Sasha and Malia, before our very eyes you’re growing up to become two strong, smart beautiful young women, just like your mom. And I’m so proud of you guys. But I will say that for now one dog’s probably enough.

そして20年前に結婚を承諾してくれた女性なしには、今日の私はありませんでした。公衆の面前ではっきり言わせてもらうけれども、ミシェル、今まででこれほど、君を愛したことはないよ。そして、アメリカ中の人々がファーストレディの君に恋するのを見たとき、こんな誇らしいことはありませんでした。サーシャとマリア。みんなの目の前で君たち2人はどんどん成長して、お母さんのように、強くて賢くて美しい若い女性になっていく。私は君たちをとても誇りに思ってる。ただし当分の間、犬は多分、一匹で十分だと思う。


To the best campaign team and volunteers in the history of politics. The best. The best ever. Some of you were new this time around, and some of you have been at my side since the very beginning. But all of you are family. No matter what you do or where you go from here, you will carry the memory of the history we made together and you will have the lifelong appreciation of a grateful president. Thank you for believing all the way, through every hill, through every valley. You lifted me up the whole way and I will always be grateful for everything that you’ve done and all the incredible work that you put in.

政治史上最高の選挙チームとボランティアのみんなに。最高の、これまでで最高でした。今回初めての人たちもいたし、一番最初から私の横にいてくれた人たちもいるけれども、みんな、同じ一つの家族です。みなさんが今後何をするにしても、どこへ行くにしても、みんなで一緒に作ったこの歴史の記憶をあなたたちは運んでいき、そして大統領の感謝の気持ちを終生受け取り続けます。どんな丘の上でも、どんな谷間でも、ずっと私を信じ続けてくれてありがとう。皆さんがずっと私を盛り上げてくれた。皆さんが成し得た全てのことや素晴らしい働きに、私はいつまでも感謝し続けます。

I know that political campaigns can sometimes seem small, even silly. And that provides plenty of fodder for the cynics that tell us that politics is nothing more than a contest of egos or the domain of special interests. But if you ever get the chance to talk to folks who turned out at our rallies and crowded along a rope line in a high school gym, or saw folks working late in a campaign office in some tiny county far away from home, you’ll discover something else.

選挙戦というのはくだらなく、ばかばかしく見えることがあります。それは承知しています。そのせいで、政治なんてしょせんエゴのぶつかり合いでしかないとか、特別な興味が支配する領域に過ぎないと、皮肉な連中に冷笑されることが多々あります。けれども実際に私たちの集会に来てくれた人たち、高校の体育館でロープに沿って並んだ人たちと話す機会をもったり、あるいは自宅を遠く離れた小さな地区の選挙事務所で遅くまで働く人たちを見たら、たぶん違うものを発見すると思います。


You’ll hear the determination in the voice of a young field organizer who’s working his way through college and wants to make sure every child has that same opportunity. You’ll hear the pride in the voice of a volunteer who’s going door to door because her brother was finally hired when the local auto plant added another shift. You’ll hear the deep patriotism in the voice of a military spouse who’s working the phones late at night to make sure that no one who fights for this country ever has to fight for a job or a roof over their head when they come home.

働きながら大学に通う若い活動員に会えば、全ての子供を自分と同じように大学に行かせてあげたいという、強い決意を聞くでしょう。一軒一軒を訪ねて歩いた若いボランティアに会えば、地元の自動車工場がもう一つシフトを増やしたからやっときょうだいが働けるようになったことを、彼女がどれだけ誇りに思っているかを知るでしょう。深夜遅くまで電話をかけ続けた軍人の伴侶からは、国を愛する思いの深さを知るでしょう。国のために戦う兵士が帰国したとき、決して仕事や住居のことで苦戦することがないように、その人は電話をかけ続けたのです。


That’s why we do this. That’s what politics can be. That’s why elections matter. It’s not small, it’s big. It’s important. Democracy in a nation of 300 million can be noisy and messy and complicated. We have our own opinions. Each of us has deeply held beliefs. And when we go through tough times, when we make big decisions as a country, it necessarily stirs passions, stirs up controversy.

だからこそ、私たちは選挙戦を戦っているのです。政治はそれができるのです。だから選挙は大切なんです。つまらないものではなく、重要で、大事なんです。人口3億人の国の民主主義というのは、うるさくてごちゃごちゃしていて複雑なものになりがちです。みんな自分の意見を持っています。一人ひとりがが深い信念を抱いています。そして私たちがつらい時を過ごす時や、国として大きな決断をする時に、感情がかき立てられ、対立がかき立てられるのは当然のことです。


That won’t change after tonight, and it shouldn’t. These arguments we have are a mark of our liberty. We can never forget that as we speak people in distant nations are risking their lives right now just for a chance to argue about the issues that matter, the chance to cast their ballots like we did today.

この夜が明けても、それは変わりません。そして、変わるべきじゃない。私たちの議論は、私たちの自由の印です。遠く離れた国々では、大事な問題について議論する機会を得るために戦うという危険を冒し、私たちが今日そうしたように、投票する権利のために命を賭けているということを決して忘れることはできません。


But despite all our differences, most of us share certain hopes for America’s future. We want our kids to grow up in a country where they have access to the best schools and the best teachers. A country that lives up to its legacy as the global leader in technology and discovery and innovation, with all the good jobs and new businesses that follow.

しかし、私たちの違いにもかかわらず、ほとんどの人は、アメリカの未来に対してある種の希望を共有しています。子供たちを、最高の学校と教師にアクセスできる国で育てたい。技術、発明や技術革新において、世界のリーダーとしてその遺産に恥じず、全てのすばらしい仕事や新しい事業がそれに続く国であって欲しい。

We want our children to live in an America that isn’t burdened by debt, that isn’t weakened by inequality, that isn’t threatened by the destructive power of a warming planet. We want to pass on a country that’s safe and respected and admired around the world, a nation that is defended by the strongest military on earth and the best troops this — this world has ever known. But also a country that moves with confidence beyond this time of war, to shape a peace that is built on the promise of freedom and dignity for every human being.

子供たちには、借金の重みに苦しまず、不平等のせいで衰弱せず、温暖化の進む惑星の破壊に脅かされない、そういうアメリカで暮らして欲しい。安全で、世界中から尊敬され憧れられる国を、地上で最強の軍隊と最高の兵士によって防衛される国を、しかし、今の戦争の時代を自信をもって乗り越え、全人類の自由と尊厳の約束の上に築かれる平和を形作る、そういう国を、子供たちに残したい。


We believe in a generous America, in a compassionate America, in a tolerant America, open to the dreams of an immigrant’s daughter who studies in our schools and pledges to our flag. To the young boy on the south side of Chicago who sees a life beyond the nearest street corner. To the furniture worker’s child in North Carolina who wants to become a doctor or a scientist, an engineer or an entrepreneur, a diplomat or even a president — that’s the future we hope for. That’s the vision we share. That’s where we need to go — forward. That’s where we need to go.


私たちは寛大なアメリカ、思いやりのあるアメリカ、寛容なアメリカを信じます。この国の学校で学びこの国の旗に忠誠を誓う移民の娘の夢を広げ、シカゴのサウスサイドに住みながらもより広い世界を夢見る少年や、医者や科学者やエンジニアや起業家や外交官や、あるいは大統領にもなりたいと夢見るノース・カロライナの家具職人の子供へも。これが、私たちが望む未来です。これが、私たちが共有するビジョンです。これが、私たちが目指すべきところです・・・・前へ。これが私たちが目指すべき場所です。


Now, we will disagree, sometimes fiercely, about how to get there. As it has for more than two centuries, progress will come in fits and starts. It’s not always a straight line. It’s not always a smooth path. By itself, the recognition that we have common hopes and dreams won’t end all the gridlock or solve all our problems or substitute for the painstaking work of building consensus and making the difficult compromises needed to move this country forward. But that common bond is where we must begin.

さて、どうやってそこに行くべきかについては、時には激しく、意見がすれ違うこともあるでしょう。200年間そうだったように、進歩のペースにはばらつきがあるかもしれません。いつもまっすぐとは限らないでしょう。いつもスムースに進むとも限りません。同じ希望や夢を共有していると認識するだけでは、膠着はなくならないし、問題も解決しませんし、合意形成のために苦労する代わりにはならなりません。この国の前進に動かすのに必要な妥協点を見いだすためには、大変な苦労が必要です。しかし、その共通の絆を認識することから全ては始まります。


Our economy is recovering. A decade of war is ending. A long campaign is now over. And whether I earned your vote or not, I have listened to you, I have learned from you, and you’ve made me a better president. And with your stories and your struggles, I return to the White House more determined and more inspired than ever about the work there is to do and the future that lies ahead.

米国経済は回復しつつあります。10年にわたる戦争も終わりつつあります。長い選挙戦もたった今終わりました。そして皆さんに投票してもらう資格が私にあるかどうかはともかくとして、私は皆さんの意見を聞き、皆さんから学び、そして、皆さんが私をより良い大統領にしてくれました。皆さんのお話しや奮闘と共に、やるべき仕事、待ち受ける未来について、今まで以上に決意を固め、意欲をもって私はホワイトハウスに戻ります。


Tonight you voted for action, not politics as usual. You elected us to focus on your jobs, not ours. And in the coming weeks and months, I am looking forward to reaching out and working with leaders of both parties to meet the challenges we can only solve together. Reducing our deficit. Reforming our tax code. Fixing our immigration system. Freeing ourselves from foreign oil. We’ve got more work to do.

今晩、皆さんは、いつもの政治ではなく、私たちが行動することを求めて投票しました。皆さんは、皆さんの仕事に私たちが集中するように私たちを選びました。私たちの仕事のためではありません。この先、両党の協力がなければ解決できない課題に取り組むため、両党のリーダーたちに連絡をとって、一緒に働くのを楽しみにしています。赤字を減らし、税制を改革します。移民制度を直し、外国石油への依存から自由になります。やるべき仕事がたくさんあります。


But that doesn’t mean your work is done. The role of citizen in our democracy does not end with your vote. America’s never been about what can be done for us. It’s about what can be done by us together through the hard and frustrating, but necessary work of self-government. That’s the principle we were founded on.

しかし、これで皆さんの仕事が終わったわけではありません。この国の民主主義における市民の役割は、投票で終わるわけではありません。アメリカは、国が私たちに何をしてくれるかという国ではありません。辛くて、なかなか報われない、けれども自治という必要な努力を通じて、私たちが協力し合って何ができるか、それがアメリカです。それが、私たちが築き上げたこの国の理念です。


This country has more wealth than any nation, but that’s not what makes us rich. We have the most powerful military in history, but that’s not what makes us strong. Our university, our culture are all the envy of the world, but that’s not what keeps the world coming to our shores.

この国には、他のどの国よりも富があります。しかし、富が私たちを豊かにしているわけではありません。史上最強の軍隊を持っています。けれども、それが私たちを強くしているわけではありません。米国の大学や文化は世界中から羨望のまなざしで見られているけれども、それが多くの人々をこの国に連れてくるのではありません。

What makes America exceptional are the bonds that hold together the most diverse nation on earth. The belief that our destiny is shared; that this country only works when we accept certain obligations to one another and to future generations. The freedom which so many Americans have fought for and died for come with responsibilities as well as rights. And among those are love and charity and duty and patriotism. That’s what makes America great.

アメリカを特別な国にしているのは、地球上でもっとも多様なこの国をひとつに結ぶ絆です。自分たちは運命を共有しているという信念、つまり、お互いが将来の世代に対する一定の義務を受け入れなければ、この国はうまくいかないという信念です。アメリカではあまりに多くの人が自由のために戦い、自由のために亡くなりました。自由は責任や権利と切り離せません。愛、慈善、義務、愛国心なども含まれます。これらが、アメリカを偉大な国にしているのです。

I am hopeful tonight because I’ve seen the spirit at work in America. I’ve seen it in the family business whose owners would rather cut their own pay than lay off their neighbors, and in the workers who would rather cut back their hours than see a friend lose a job. I’ve seen it in the soldiers who reenlist after losing a limb and in those SEALs who charged up the stairs into darkness and danger because they knew there was a buddy behind them watching their back.

今夜の私は、希望に満ちています。なぜなら、その精神がアメリカで健在であるのを見たからです。家業の経営で、近所の人たちをクビにするくらいなら自分の給料を減らすという人たちに、友達が職を失うくらいなら自分の時間数を減らすという労働者に、手足を失ってもまた再入隊する兵士たちに、後ろからしっかり守ってくれる仲間がいると分かっているから、暗闇の危険の中、階段を駆け上っていった海軍特殊部隊の兵士たちにその精神を見ました。


I’ve seen it on the shores of New Jersey and New York, where leaders from every party and level of government have swept aside their differences to help a community rebuild from the wreckage of a terrible storm. And I saw just the other day, in Mentor, Ohio, where a father told the story of his 8-year-old daughter, whose long battle with leukemia nearly cost their family everything had it not been for health care reform passing just a few months before the insurance company was about to stop paying for her care.

ニュージャージーやニューヨークの岸辺で、全ての政党や行政府のレベルを問わずかけつけたリーダーたちが、凄まじい嵐に破壊されたコミュニティーを再建するため、ふだんの立場の違いを脇に追いやる中にもその精神を見ました。そしてつい先日、そこで会ったお父さんが、長いこと白血病を患う8歳の娘さんの話をしてくれたオハイオ州メンターでも見ました。保険会社がその子の治療費の負担を止めようというわずか数カ月前に、医療保険改革法案が成立していなければ、その家族は全財産を失っていたでしょう。


I had an opportunity to not just talk to the father, but meet this incredible daughter of his. And when he spoke to the crowd listening to that father’s story, every parent in that room had tears in their eyes, because we knew that little girl could be our own. And I know that every American wants her future to be just as bright. That’s who we are. That’s the country I’m so proud to lead as your president.

このお父さんと話すだけでなく、素晴らしい娘さんにも会うこともできました。そしてお父さんが会場で聴衆に自分たちの体験を語ったとき、その場にいた全ての親御さんが目に涙を浮かべていました。あの小さい女の子が自分の子供だったらと、みんな思っていたからです。そして、女の子の未来が自分の子供の未来と同じくらい明るいものであるようにと、全てのアメリカ人が願っているのを知っています。それが私たちなのです。私は大統領としてこの国を率いることを、とても誇りに感じています。


And tonight, despite all the hardship we’ve been through, despite all the frustrations of Washington, I’ve never been more hopeful about our future. I have never been more hopeful about America. And I ask you to sustain that hope. I’m not talking about blind optimism, the kind of hope that just ignores the enormity of the tasks ahead or the roadblocks that stand in our path. I’m not talking about the wishful idealism that allows us to just sit on the sidelines or shirk from a fight.

そして今晩、たくさんの困難を経験したにもかかわらず、ワシントンに不満はたくさんあるにもかかわらず、それでもこの国の未来についてこれほど希望を抱いたことはありません。アメリカについて、これほど希望を持ったことはありません。その希望が長続きするよう、皆さんにお願いしたいのです。盲目的な楽観主義について話しているのではなく、目前に立ちはだかる大きな仕事や道をふさぐ障害物を無視したりする、そんな希望のことではありません。ただ高みの見物を決め込んだり、戦いを前にしてちぢこまるだけの希望的な理想論のことでもありません。

I have always believed that hope is that stubborn thing inside us that insists, despite all the evidence to the contrary, that something better awaits us so long as we have the courage to keep reaching, to keep working, to keep fighting.

私はかねてから希望というのは、自分たちの中にある頑固なもの、反対の証拠をつきつけられても長い間、手を伸ばし続け、働き続け、戦い続ける勇気があれば、今より良いものが何か待っていると、頑なに信じ続ける何かだと信じてきました。


America, I believe we can build on the progress we’ve made and continue to fight for new jobs and new opportunity and new security for the middle class. I believe we can keep the promise of our founders, the idea that if you’re willing to work hard, it doesn’t matter who you are or where you come from or what you look like or where you love. It doesn’t matter whether you’re black or white or Hispanic or Asian or Native American or young or old or rich or poor, able, disabled, gay or straight, you can make it here in America if you’re willing to try.

アメリカの皆さん、これまでの成果をもとに私たちはさらに前進し、中間層のための新しい仕事や新しい機会、そして新しい安全のため、さらに戦い続けることができると、私はそう信じています。一生懸命働く気持ちがあるならば、何者だろうと構わない、どこから来ようが、外見がどうだろうが、どこを愛していようが構わないという米国創設者の約束を守ることができると信じています。黒人だろうが白人だろうが、ヒスパニックだろうがアジア系だろうがアメリカ先住民だろうが構わない。若かろうが、老いていようが、金持ちであろうが、貧乏であろうが、健常者であろうが、障がい者であろうが、ゲイであろうが、ストレートであろうが、やる気さえあれば、ここアメリカではなんとかなります。


I believe we can seize this future together because we are not as divided as our politics suggests. We’re not as cynical as the pundits believe. We are greater than the sum of our individual ambitions, and we remain more than a collection of red states and blue states. We are and forever will be the United States of America.

こういう未来を、みんな一緒につかめると私は信じています。なぜなら、政治が騒ぐほど、私たち国民は分断されていないからです。評論家たちが信じるほど、私たちは皮肉屋ではないからです。私たちは、個人の野心を全部あわせたよりもはるかに大きく、赤い州や青い州の寄せ集めよりも偉大です。私たちはいまでも、そして永遠に、アメリカという国なのです。

And together with your help and God’s grace we will continue our journey forward and remind the world just why it is that we live in the greatest nation on Earth.

皆さんの助けと神の恩寵と共に、私たちは前へと旅を続け、私たちが暮らすこの国がなぜ世界で最も偉大な国なのか、世界中に伝えていきます。
Thank you, America. God bless you. God bless these United States.


ありがとう、アメリカ。神様の祝福がみなさんにありますよう。このアメリカ合衆国を神様が祝福してくれますように。



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2012年11月6日火曜日

選挙 by Adam Hyde

今日は、米国大統領選挙も近いので、かなり前にいただいた選挙に関するアダム先生のコラムを紹介させていただきます。掲載するのが、遅くなってごめんなさい。




こんにちは。ECCのアダムです。

来月はアメリカ大統領選挙なので私は最近、毎日、テレビかインターネットで選挙関係なニュースを見ています。私はカナダ人ですがカナダはアメリカに近いし、カナダの会社が良くアメリカの会社と貿易するのでアメリカの経済が強かったらカナダの経済も強くなります。どんな国でも政治家が経済、国内や国際政策などに影響を与えるので国民がよく政治家に対して文句を言います。その上、自分の好きな議員が選挙で当選しても、知事、総理大臣と他の政治の言う事に従わなければならい時がありますので、自分の思うとおりにものごとを変えるのは難しいです。

カナダはアメリカではないですがアメリカに近くて文化、歴史と公用語は同じなのでアメリカの社会と経済がカナダに影響を与えます。ですので、高校生のときからアメリカ政治に興味を持つようになりました。その上、カナダは僕にとって基本的にアメリカの植民地なのでほとんどカナダの政治は関係ないです。アメリカの経済が強かったらそれだけでカナダの経済も強くなるので全然カナダの政治を気にしなかったです。そして韓国と日本に住んだ時に国際政治に興味を持ちましたので帰国した時にもよくインターネットで他のニュースを読み続けました。

確かにアメリカ政治と経済は、カナダ経済に影響を与えますが、国内政策にはほとんど影響を与えません。私はカナダとカナダのオンタリオ州の対策に反対なので2011年のオンタリオ州選挙に立候補しました。私の応援する政党は小さいので絶対に当選できないと知っていましたが、大きい政党に反対です。今でもオンタリオ州の自由党に入っています。基本的に民主党のように人権はとても大切ですが自民党のように経済も大切です。これまでの人生の中で立候補したのは初めてだったので、自分の結婚式くらい緊張しました。

先ず、立候補する為に自分が住んでいる市に住む市民25人から推薦のためのサインをもらう必要があります。サインをもらってから候補者として登録する事ができます。有権者に応援してもらうように市民の家に行って自分の意見、やりたい事と政党の対策を説明します。大きな政党に比べて、自由党は立候補者が少ないし、応援する人も少ないのでほとんど自分で自分をアピールしました。妻と自由党を応援する3人が広告を載せるのを手伝ってくれ、一緒に市民の家にいきました。

州選挙でも他の候補者に対して市民の前で議論があります。私は緊張しましたが、政治をよく勉強しましたので、よくできたと新聞に書かれました。結局、8人中、私は5位でした。自由党の対策を教えるのが好きなのでもう一度立候補すると思います。

では、また。

アダム

2012年10月30日火曜日

スラングの使われ方の移り変わり

ウォール・ストリート・ジャーナルに英語のスラングについての面白いコラムが載っていたので紹介します。スラングの使われ方にも移り代わりがあるというお話。ここに出てくる"Ain't"も本来は、教養のない人々によって使われていましたが、今では、エール大学やオックスフォード大学に通ったクリントン大統領によって演説の中で使われ、人々の共感を得るようになりました。

ちなみに、"Ain't"の定義とは?
http://www.merriam-webster.com/dictionary/ain't
Definition of AIN'T
1: am not : are not : is not
2: have not : has not
3: do not : does not : did not —used in some varieties of Black English

つまり、本来は、これらの区別がつけられないほど無教養な人が使う口語体だったのですが、最近では、広くメディアの活字体でも使われるようになりました。もし、どこかで見かけたら、上の定義にある意味だということを覚えておくと便利です。

それでは、WSJのコラムをどうぞ。


これって正しい英語? スラングをめぐる米国史上最大の言語論争

デービッド・スキナー

「Slightly Stoopid murked it last night(夕べのスライトリー・ストゥーピッドは最高だった)」
甥っ子のフェイスブックのページを見たら、こんな投稿があった。Slightly Stoopidとはバンドの名前だ。オンライン辞書を見たら、murkはゲームをする人間が使うスラングで、「破壊する」という意味だと知った。しかし、ここでは「演奏がとてもよかった」という意味で使われている。
しかし、チャド・ハーバック氏の小説「The Art of Fielding(守備の技術)」を昨年読んだときには、敵のピッチャーがfilthy(汚い)とはどういう意味かすぐにわかった。そのピッチャーの球はなかなか打てない、という意味だ。
ジャド・アパトー氏のコメディー映画「Superbad(邦題:「スーパーバッド 童貞ウォーズ」)の中で役者のジョナ・ヒル氏が「fo' sho'」と叫んだ時も、「for sure(確かに)」のRを落として発音していることはなんなく理解できた。
新しい言葉が次々に生まれ、スラングと標準英語を隔てる、目には見えない境界が試されるなか、私のようなnewbたち(newbはゲーム用のスラングで、「初心者」、「新参者」の意味)は、とめどなく打ち寄せる非標準の英語の波の中を渡っていかなければならない。
しかし、私はそれを否定しようとは思わない。ほとんどの人がそうだろう。オックスフォード英語辞典が2004年に「bootylicious(セクシーな)」を収録すると発表したとき、反対の声はあまり聞こえてこなかった。Bootyliciousは実際、面白く、かつ概ね無害な言葉のように思えた。これ自体、大変なことだ。
半世紀前にG&Cメリアムがウェブスター新国際英語辞典第3版を発表したとき、信じられないほど激しい抗議が起きた。ウェブスター第3版は「評価が甘い辞書」と言われるようになり、米国の歴史上おそらく最大といえる言語論争が巻き起こった。
ことの始まりは新聞発表だった。そこには、ウェブスター第3版には「驚くべき新たな言語的概念が数多く」が含まれていると書かれていた。A-bomb(原爆)、astronaut(宇宙飛行士)、beatnik(ビート族)、den mother(カブスカウトの組を監督する女性)、fringe benefit(付加的給付)、solar house(太陽光発電設備のある家)、wage dividend(賃金配当)、Zen(禅)などがそうだ。
さらに、大衆小説作家のミッキー・スピレイン、ピンナップガールのベティー・グレイブル、売春宿の経営者だったポリー・アドラーなど、辞書に載るとは思えない人物の名前も収録された。
ウェブスター第3版の編集長、フィリップ・ゴーブ氏は、英語は過去四半世紀の間に英語は文語的ではなくなったと述べた。ゴーブ氏の主張を裏付けたのは、「ain't(~ではない)」の扱いである。ain'tはおそらく非標準英語として最も有名な言葉だ。新聞発表には、ついにこのain'tが辞書に収録されたと書かれていて、ウェブスター第3版では「米国のほとんどの地域で教養のある(cultivated)話者によって口語として使われる」と説明している、とあった。
シカゴ・デイリー・ニュースは社説で「Cultivated, our foot(教養があるとは、おっと失言)」と書いた。新聞は面白半分に見出しで遊んだ。シカゴ・トリビューンは「Saying 'Ain't' Ain't Wrong('Ain'tと言っても間違いじゃない)」、ルーイビル・タイムズは「Ain't Nothing Wrong with the Use of Ain't(Ain'tを使っちゃいけないことはない)」と書いた。
反対意見もあった。ワシントン・サンデー・スターは大見出しで「It Ain't Good(Ain'tは正しくない)」と吠えた。ビンガムトン・サンデー・プレスは「Ain't Still Has Taint(Ain'tはまだ不名誉な響きが残っている)」との見出しを掲げた。
文学界の知識人たちが追い打ちをかけた。ウィルソン・フォレット氏はアトランティック誌で、ウェブスター第3版を「非常に大きな不幸」だと評し、ゴーブ氏などの編集者が英語を破壊しようとしていると責め立てた。ジャック・バーザン氏はアメリカン・スカラー誌で、ウェブスター第3版は「1つの団体がまとめたものとしては最も長い政治パンフレット」と述べた。
こうした発言が思わず笑ってしまうほど行き過ぎであることは今では容易にわかる。新聞発表はain'tの用法の説明を間違って記載していた。ain'tの使用を「多くの人は支持していない」ことや、一部で非標準扱いされていることが抜けていたのだ。それに、ain'tは第3版よりも保守的なウェブスター第2版など他の辞書にも、以前から収録されていた。
しかし、問題が起きたのは、ゴーブ氏が文語体と口語体の違いを意図的に曖昧にしたからだった。ゴーブ氏は「スラング」という分類をなるべく使わないようにした。第2版では曖昧な言葉はただ、「vulgar(通俗的)」とか、「humorous(おどけた表現)」とか、「erroneous(誤用)」と表記していたが、そうした偏見を与えるような分類も全て廃止した。ゴーブ氏はさらに、口語ではよく使われるが、文語では使われない用語を指す「colloquial(口語的)」という分類も締め出した。
標準的な用法の説明はゴーブ氏にとって扱いが難しい問題だった。教養のある人も教養に欠ける言葉を使うこともあったし、当時は、最新の言語学が学校文法を攻撃し、なじみのある多くの規則が非常に差別的な英語観に基づいていることを指摘していた。全米英語教師協議会は「正しいかどうかは用法次第」や、「全ての用法は相対的」との見解を示していた。しかし、ゴーブ氏は旧態依然とした規則へのこだわりと、何が正しいかわからないという新たな不可知論の間でどっちつかずの立場はとらず、議論を回避した。
過去50年間で、ain'tは正しくないという感覚は薄れてきたが、潜在的に庶民的な言葉であることには変わりはない。ビル・クリントン元大統領は民主党全国大会で「全ての政治家は有権者全員に、自分は自分自身で建てた丸太小屋で生まれたと思われたがっている」と述べ、こう続けた。エール大学やオックスフォード大学に通ったクリントン氏は「It ain't so.(実際はそうではない)」と言ったのだ。
一方で、侮辱的な言葉は侮辱的であることに変わりはないものの、日常的に使われるようになってきた。最近、あるファミリーレストランである若者が着ていたTシャツの胸の部分にはFで始まる例の言葉が印刷された。言語は非常に複雑だ、とフィリップ・ゴーブ氏はよく言っていた。その通りだ。しかし、そう思うのであれば、ウェブスター第3版では分類を減らすのではなく、増やすべきだったのではないか。
スキナー氏の新著は「The Story of Ain't: America, Its Language, and the Most Controversial Dictionary Ever Published(Ain'tの物語:米国、その言語と最も議論を呼んだ辞書)」。


2012年10月24日水曜日

ブラピのシャネルのコマーシャルを聞き取ってみよう

今日は、カナダ英語とは関係ないのですが、今、海外で話題になっているブラピのシャネルの広告を紹介したいと思います。このように短いフレーズを何度も繰り返して、自分の耳に聞こえた英語をノートに書いて、理解できるまで聞くということが英語の初級レベルには大切です。

それでは準備はいいですか。答えはコメント欄に書いておきます。


There you are - CHANEL N°5 Part 1






このブラピのシャネルのCMには、賛否両論、さまざまな意見があります。噂では、このシャネルのCMのブラピの出演料は、7億円だそうです。

このブラピのCMに対抗して、エレンがカヴァーガール(Covergirl)のCMを彼女のショーで紹介していました。こちらは、それぞれが短いフレーズなので、聞き取りの練習に適していると思いましたが、フレーズが映像に含まれているので、なるべく見ないで聞き取ってみましょう。


私が英語を学習したての頃は、YouTubeやipodなどありませんでしたから、よくカセットテープ(今では死語?)に録音した洋楽の曲の歌詞をノートに書き出して一緒に歌っていました。好きな人の歌ほど、何度も何度も聞いて、聞き取れるようにしました。とにかく、家に帰ったら、FENなどのラジオをつけっぱなしにして、英語で耳をならしました。

少しでもみなさまの英語の勉強に役立つよう、これからも楽しい教材を紹介します。


2012年9月26日水曜日

ビル・クリントンbyアダム・ハイド

今日も引き続き、アダム先生のエッセーをご紹介しましょう。

こんにちは。 
ECCのアダムです。

今年の11月にアメリカ大統領選挙がありますので今、米国では、さまざまな政党がアメリカ人にアピールしています。いろいろな候補者がいますがやっぱり一番お金を持っていると人気がある政党は民主党と共和党です。最近、共和党全国大会と民主党全国大会が開かれました。不景気のせいで与党のオバマ大統領の支持率は減ってしまったので共和党が勝利する可能性が高いです。オバマを応援する為にビル・クリントン元大統領が民主党全国大会で演説してオバマと一緒にキャンペーンに参加しています。

ビル・クリントンは、1993年から2001年まで第42代大統領としてアメリカを統治しました。当時、70%の支持率で、クリントン元大統領は今でもとても人気があります。クリントン政府では、借金ではなく20世紀で一番多い財政黒字になりました。その上、ほかのアメリカ大統領のように大きい戦争を始めませんでした。

1946年8月19日アーカンソー州ホープ市に生まれたビルが生まれる約3ヵ月前に自動車事故で死去した父ウィリアム・ジェファソン・ブライス・ジュニアにちなんでウィリアム・ジェファソン・ブライス三世と名づけられました。その後、母親がロジャー・クリントンと結婚したので、ビルの名字もクリントンになりました。

子供の時、ビル・クリントンは、音楽に興味がありましたので、今でもサクソフォンを演奏しています。高校生の時にテレビでジョン・ケネディ大統領を見て、政治に興味をもちました。家族は貧乏でしたが、クリントンは賢かったので奨学金で大学に入りました。大学で哲学、政治と歴史を勉強しました。大学を卒業後も、まだ勉強をする気があったので大学院に入りました。1971年に有名なエール大学の図書館で、偶然、ヒラリー・ローダムに会いました。1975年に結婚しました。
大学院を卒業してからクリントンは教授になりましたが、まだ政治に興味がありましたので1976年にアーカンソー州知事になる為に立候補しました。クリントンは演説するのが上手だったし、賢かったのですが、全然、政治の経験がなかったので知事になりませんでした。けれども3位だったし、他の候補者はいませんでしたので、アーカンソーの検事総長になりました。1978年の補欠選挙でアーカンソー州知事になりました。
1992年まで知事として、アーカンソー州の経済を回復させ、貧困も減らしたので、大人気の知事でした。1992年にアメリカの大統領になる為に立候補して勝ちました。セックス・スキャンダルがありました。でも、ビル・クリントンのお陰でアメリカの評判は良くなって、アメリカの経済も豊かになりました。

では、また。

アダム
ちなみに、米国の二大政党である、民主党と共和党を英訳すると、

民主党: The Democratic Party, The Democrats
民主党員:a Democrat

共和党:  The Republican Party,  The Republicans
(口語では、the Grand Old Party, 略して the GOP)
共和党員:a Republican

となります。アダム先生は、共和党が勝利する可能性が高いと書かれていますが、つい最近、ミット・ロムニー大統領候補が、南部フロリダ州で開いた富裕層対象の政治資金集め夕食会で、

米国民の約47%が所得税を払っていない」

「この47%は政府に頼り切りだ。自分たちは被害者で、政府に面倒を見る責任があり、医療、食事、家、何でも受け取る資格があると思っている」

などと失言して、貧困層を批判したことで、大きな痛手を負いました。このように、富裕層の聴衆に向かって、政治資金を集めるために、貧困層を攻撃するような発言をする人をわたしは信用しません。米国人も同じでしょう。大統領としては、失格だと思います。


2012年9月25日火曜日

肥満の問題 byアダム・ハイド


今日から日本のECC外語学院で4年間、英語を教えていたアダム先生のエッセーを連載します。アダム先生は、日本に行く前、今からちょうど10年前になりますが、私の日本語のクラスを聴講生として、とっていました。当時から、日本語にとても興味を持たれていましたが、別の大学に通っていたので、聴講生としてしか、私のクラスをとれなかったのです。

カナダに帰国した今でも、毎週ECCの会員向け携帯サイトにエッセーを投稿していらっしゃいます。アダム先生とECCの許可を得て、そのエッセーをこちらのブログで紹介します。(ECCとこのブログは何の関係もありません。)

アダム先生は、大阪に住んでいましたから、日本語では、大阪弁を話します。外人が大阪弁を話すのを聞くのは、なんだかおかしな感じがします。ちなみに、アダム先生は、大阪の日本語学校で、日本語上級のクラスで勉強していました。

アダム先生のエッセーを読むと、日本とカナダの文化の違いなどが手に取るようにわかりますから、とても面白いですよ。


自己紹介文:

私はアダム・ハイドと申します。

カナダのナイアガラ・オン・ザ・レイク出身です。

現在は、ナイアガラに住んでいます。
4年間でECC外語学院の英語の教師として大阪市で暮らしました。
ECCでは、子どもと大人と両方教えました。
日本人の妻がいます。
私の得意は会話を教える事ですが文法も好きです。
ご一緒に英語を勉強をするのを楽しみしています。



こんにちは。ECCのアダムです。
今日は、「肥満の問題」について、書きたいと思います。 
東洋人と比べたら西洋人には肥満が多いようです。さらに、欧州より北米で太った人が多く見られます。カナダ政府によりますと2010年のカナダ全体の肥満率は23%でした。比べたら日本全国の肥満率はわずか3.3%でした。世界保健機関(WHO)ではBMI(Body Mass Index)30以上を肥満としています(BMIはリンク先のサイトに身長と体重を入れるだけで計算できます)。BMI 25から29.9は太り過ぎ、18.5から24.9は普通、18.5以下は痩せすぎです。カナダの政府によりますとBMI25以上の率は57%なので心臓発作と高血圧になる人は増えているそうです。

色々な原因はあると思いますがたいてい、食べ物の量、運動しない事と文化の影響でカナダ人は肥満になっていると思います。178cmと79kgで私のBMIは24なのでカナダ人として私は普通ですが日本に住んだ際よく日本人に「アダムさんはけっこう太っていますね」と言われました。実は来日する前に、「お前はデブ」と言われた事がなかったので初めて言われた時に絶対に冗談か皮肉と思いました。

しかし、いずれにしろ、他の国と比べたらカナダ人はかなり太っています。まず、歴史的、文化的な原因を紹介します。日本の女性と比べて、カナダの女性は筋肉質の男性が好きです。男性が強かったら、女性と子供を守れます。昔の男性は、家族を食べさせる為に狩りに行かなければなりませんでしたので弱い男性より強い男性の方が動物を殺すのは上手でした。昔から女性は強い男性の事が好きだったので、歴史と文化の影響で今でもそうです。強くなる為には、運動と食べ物が必要です。現在、テクノロジーの影響で運動する人は減っていますが、食べ物の量は同じです。それで太ってしまう人が多いのです。

続いて、生活とテクノロジーの影響を紹介します。20年前と比べたら現在の子どもの方が太っています。私は今31歳です。小中高等学校の時を思い出したら、デブな子どもはあまりいませんでしたのでデブな子どもが良くいじめられました。現在、子どもの肥満率は14%なので太っている事は普通になっています。確かに私の子供時代にテレビとテレビゲームはありましたが、私の両親の時代には、テクノロジーはあまりなかった代わりにスポーツをして遊びました。しかし、今の時代の子どもの両親は、テレビゲームで良く遊んだので、子供にあまりスポーツと運動をさせません。

肥満の問題を解決するようにカナダ政府が色々な工夫をしています。今、カナダで売っている食料品のラベルにカロリー、たんぱく質、炭水化物と砂糖の量などを載せなければなりません。今、学校でも、子どもたちは栄養と運動に関して勉強しています。

いかがでしたか。もし、これだけのことを英語で書きなさいと言われたら、けっこう難しいのではないでしょうか。現代の日本では、筋肉質の男らしい男性よりも、やさしくて女性的な男性の方がモテるのではないかと思います。やはり、もう現在では、狩りに行く必要はなくなってしまいましたし、パソコンなら、指一本で操縦可能ですから、筋肉がモリモリあってもあまり、役にたたないからでしょう。

しかし、そのせいで、運動不足になり、肥満児が増えているというのは、問題ですね。バランスのいい食事と適度な運動で、快適な毎日を過ごしましょう。



2012年9月16日日曜日

カナダでよく使われるスラング

カナダでよく使われるスラングとして、一番有名なのは、「Eh!」だろう。発音は、日本人が意外なことが起こったときに「え?」というのと似ています。人によっては、「えい?」と発音する人もいます。よく米国人がカナダ人をからかって、カナダ人のまねをするときに、必要以上に、「Eh!」を文末につけているのを見かけますが、実際は、ほとんど使わない人のほうが多いようです。

どんなときに使うかというと、自分が言ったことに同意を求めるときに使います。日本語でも文末に「ね。」を付けて同意を求めるのと似ています。例えば、"It's cold today, eh?" 「今日は寒いですね。」 "Leaves turned the color pretty well, eh?"  「紅葉がきれいですね。」 "There are a lot of sale this week, eh?" 「今週はセールが多いですね。」など。

下の動画では、カナダでもっともよく使われるスラングが紹介されている。この女性は、英語学校の講師だろうか。まさにカナダ人の代表のようなひとで、とても気さくでカジュアルな人だ。少しネジのはずれたところも典型的なカナダ人だ。

ただ、最初と最後に、「Eh!」を紹介するために、必要以上に、「Eh!」を使っているところは不自然なような気がした。



カナダ人が良く使うスラングの単語:

■Canuck カナック: カナダ人のこと。私は初めて聞いたので、あまり使われていないと思う。
カナダで最も人気のあるスポーツであるホッケー(カナダ英語ではハッキー)チームの名前にも使われている。=>バンクーバー・カナックス

■Toque トゥーク:この女性がかぶっているような冬にかぶる帽子のこと。語源はフランス語。

■2-4 トゥー・フォー:ビールのこと。ヴィクトリア女王の誕生日が5月24日で、その日にはカナダ人がたくさんビールを飲むことから関連付けて覚えることもできる。

■Mickey ミッキー:カナダのLCBO(政府運営の酒店)で買える最小量のアルコールのこと。

■A 40 ア・フォーティ:40オンス (約1183ml)。

■A 60 ア・スィックスティ:(約1774ml)。

■Poutine プーティン:フライド・ポテトにチーズと牛脂から作られたグレイヴィーをかけたもの。ケベックが発祥地なので、語源はフランス語。

■Double-Double ダブル・ダブルだが、ダァボ・ダァボのように聞こえる:スプーン2杯のクリームとシュガーを入れたコーヒーのこと。この言葉は、特にカナダで有名なティム・ホートンというドーナツショップ兼カフェで使われる。スターバックスでも使えるのかわからないので、今度使ってみよう。

■A Dart ダート:ダーツというゲームのことではなく、タバコのこと。A Smokeとも言われる。

■Weed ウィード:大麻のこと。






2012年9月15日土曜日

英語力(読解と聴解)をオンラインで自己評価

カナダはオンタリオ州のカナディアン・イングリッシュのレベルを自己評価するサイトを紹介します。英語を第二言語として自分の英語の読解能力と聴解能力レベルがカナディアン言語評価基準(the Canadian Language Benchmarks:CLB)でどのくらいかを評価したい人なら登録(無料)するだけで、どなたでも受けることができます。残念ながら、スピーキングとライティングは評価できません。

登録するには、お名前、パスワード、Eメールアドレスが必要となります。

テストを始める前に下記の項目を確認してください。

- 静かな環境にいること。
- ヘッドセット、又は、音声が出るパソコンがあること。
- 全テストを完了させるために十分な時間があること(約1時間)。
- リスニング・テストの中には、回答に要するノート・シート(メモ用紙)を印刷することが求められる問題があります。印刷がいつでもできるように準備してください。
- 友達や家族の助けなしに回答すること。
- 辞書は使わないこと。
- 高得点を取得するために全ての問題に答えてください。
- 答えがわからない場合は、推測してください。
- パソコンが技術的要件を満たしていることを確認して下さい。

評価テストを終了するには、1時間かかり、終わった後にレベルが表示されます。
CLBのレベルは、1から10まであって、1は初級で10は上級となります。詳しくは、リンク先の各レベルのCan Do List をご覧下さい。

それでは、始めてください。↓のリンクをクリックするとテストが始まります。

Access Your Canadian English Online  

解説文を英語 か フランス語 か選択できます。

このサイトについて

このサイトは、日本で将来カナダに留学したり、永住したりする人たちのためにカナディアン・イングリッシュを学ぶためのサイトです。英語は大きく分けてイギリスで話されるブリティッシュ・イングリッシュと北米で話されるアメリカン・イングリッシュの二つが代表的です。カナダで話されるカナディアン・イングリッシュは、アメリカン・イングリッシュと混同されがちですが、実際はたくさんの違いがあります。

カナディアン・イングリッシュは、どちらかというと、ブリティッシュ・イングリッシュに近く、発音がとてもきれいです。将来、カナダに住みたいと思っている方は、ぜひ、このサイトを参考にして、カナディアン・イングリッシュを学んでください。

将来的には、スカイプを使ってカナダ人と話せるようにする予定です。




カナダ英語(ウィキペディア)より


カナダ英語(英語: Canadian English)は、カナダで使用されている英語のひとつである。アメリカ英語と語彙を共有しつつ、イギリス英語の用語を持つ。カナダの綴りは、イギリス英語アメリカ英語の要素で構成される。カナダ英語にだけ存在する表現もあり、フランス語の影響を多くの分野で受け、地域によって多様性がある。

約1700万人のカナダ人英語版)(人口の58.8%)は、英語を第一言語(母語)にしている[1]

歴史

「カナダ英語」と言う用語が初めて確認されたのは、1857年のカナダ学会で、アーキボルド・コンスタブル・ギーキー牧師(Reverend A. Constable Geikie)が行なったスピーチである。スコットランド生まれのカナダ人であるギーキーに、英国中心主義的(Anglocentric)な態度が反映し、ギーキーが適切な英語と考えていたイギリスからの移民が話す言葉と比べ、カナダで話される英語を「崩壊方言」とした。この考え方はその後数十年続く。[2]

カナダ英語は、過去200年ほどにおける、4回における移民と定住の波の中で作られた。第1の波は、カナダで言語的にもっとも大きな役を果たしたイギリス出身のトーリー党員 (British Loyalist) (Tories#Canada) が、アメリカ独立戦争から落ち延びてきた時である。 第2の波は、1812年の米英戦争後に、反英感情がカナダ市民に広がるのではないかと心配したイギリスとアイルランドが、カナダへの移民を推奨した時である。世界的に移民が増える1910年から1960年に、カナダは他の国ほど影響を受けなかったが、カナダを多文化主義国にし、現在のグローバリゼーション時代における、言語的な変化を受け入れる土壌を作った。[3]

カナダ先住民 (Canadian Aboriginal people) の言語は、移民の居住区が広がる前に、カナダで使用されるヨーロッパ言語に影響し始めた。[4]また、ローワー・カナダで話されるケベック・フランス語が、アッパー・カナダの英語に、語彙を供給した。[5]


綴り [編集]

カナダ英語の綴りは、イギリス英語とアメリカ英語の規則が混合されている。
フランス語から入った言葉で、「color」や「center」など、アメリカ英語では「-or」「-er」で終わる単語が、イギリス英語の綴りが残る「-our」「-re」(「colour」「centre」など)になる。またアメリカ英語での「defense」「offense」等の名詞は、カナダではイギリス綴りの「defence」「offence」と書く。

カナダではアメリカ同様、イギリス綴りの「tyre」「kerb」を使用せず「tire」「curb」などを使用するなど、イギリス綴りを使用しない場合もある。

カナダではアメリカ同様「realize」や「paralyze」などの単語は通常「-ize」「-yze」と綴られ、「-ise」「-yse」を使用しない。

カナダでは「-ice」で終わる名詞の動詞の語末が「-ise」になることがある。例として名詞「practice」の動詞形は「practise」。名詞「licence」の動詞形は「license」(アメリカでは名詞も動詞も「license」と綴る)。

カナダではイギリス同様、動詞の語末にアクセントが置かれない場合でも「-ing」などの接尾辞がつく場合に語末の子音を重ねることが多い(カナダでは「travelling」「cancelled」「controllable」。アメリカでは「traveling」「canceled」「controlable」)[6]

カナダ綴りの慣習は、カナダの産業史とも関係しているものがある。例えば、カナダで小切手をイギリス同様「cheque」と綴るのは、カナダにとって重要であったイギリスの金融機関に関連すると考えられる。一方、カナダの自動車産業はアメリカ企業を発祥とするため、「tire(タイヤ)」など自動車部品の専門用語はアメリカの用語を使っている。他にもトラックは「truck」(イギリスでは「lorry」)、ガソリンは「gasoline」(イギリスでは「petrol」)等にもみられる例である。

政治的な用語では、カナダの政治史が影響を与えているものも多い。カナダの初代首相ジョン・A・マクドナルドはかつて、カナダ政府の文書はイギリス綴りで記載するよう勅令を出したことがある[7]

現在の公式的なカナダ綴りは、カナダ国会の公式議事録(ハンサード (Hansard) 様式)に使用されているものが基準となっている。但しカナダの編集者の間では、カナディアン・オックスフォード・ディクショナリー(Canadian Oxford Dictionary)[8]の「Editing Canadian English(カナダ英語での編集)」の章で参照する者が多く、必要であればさらに複数の辞書を使用している。

近年ではカナダの新聞、特に末尾「-our」等に関してはイギリス綴りを使用している。カナダの全国紙「グローブ・アンド・メール」は1990年10月に綴り方針を更新[9]し、他の新聞も同様に変更を行なった。「トロント・スター」はイギリス綴りの採用には積極的ではなかったが、他紙同様の変更を行なった。