2012年12月15日土曜日

英語学習と自己投資について考える

先日、橋下徹大阪市長の九州での演説を聞いていたら、日本人は中学校から大学まで10年間英語を勉強しても、話せるのは”Good Morning”だけなどと冗談を言って聴衆を笑わせていました。さすがに”Good Morning”しか話せないということはないでしょうが、現在の英語教育は、10年間英語を勉強しても、自分の言いたいことがほとんど話せないというのが現実ではないかと思います。

英語を話せなくてもいい環境にいるということが一つと、人間は必要に迫らせないと言語を本気で勉強するのは難しいということがあるのかもしれません。

一番効果的なのは、自分を英語しか通じない場所に置くことですが、経済的、時間的な問題があってなかなかできない方が多いのではないでしょうか。幸運なことに、今はパソコンで世界中の人といつでもどこでも話せる環境にあります。それを利用しない手はないでしょう。

今日は、英語学習と自己投資についてとても理論的にかかれたエッセーを紹介します。著者は、カナダのモントリオールにあるラヴァル大学文学部日本語科主任溝江 達英(みぞえ たつひで)先生です。
 
CNNに広告を出しているRosettaStoneの宣伝ですが、英語を勉強しようとしている人にとってとても役立つ内容だと思ったので、紹介させていただきました。 


数字でみる英語

私が住んでいるカナダ・モントリオールは、英仏バイリンガルの都市である。ただ都市部を離れると、フランス語色がより一層強くなる。世界的に知られるカナダの歌姫、セリーヌ・ディオンはモントリオール近郊のフランス語地域に生まれた。意外と思われるかも知れないが、彼女の母語はフランス語で、生まれながらの英仏バイリンガルではない。英語は21歳になってから本格的に勉強し、わずか1年足らずでマスターし、22歳で英語のデビューアルバムを出した。英語で歌うことで、どんどん知名度を上げて行き、結果的には非英語圏の日本でもブームを築いた。英語が影響力の武器になっているとはまさにこのようなことである。



英語を母語にしている人は、4億人程度、英語を外国語として理解できる人の数は概算で14億人強いると言われる。そうなると、英語でコミュニケーション可能な人が累計で18億人強いるわけだ。つまり、我々の住む世界の4人に1人が英語を使える計算になる。事実、この記事を読んでいるあなた本人か、あなたの友達に、英語と関わりを持っている人がいるはずだ。情報発信がFacebookやツイッター、YouTubeを介してできる時代になった今、英語で情報発信すれば、通用度の高い言語なだけに、世界に自分のコンテンツを速く広く伝えられる。どんなに中身の素晴らしいコンテンツであっても、日本語での発信であれば、日本語が影響の及ぶ範囲内だけの拡散力しか今のところ望めない。広く情報を発信したいのであれば、やはり英語が必要となってくる。

英語学習と付加価値

情報伝達のスピードが速い世の中で、その伝達スピードと拡散を助ける英語と、今後どう向き合っていくべきなのか。

昔はネイティブスピーカーから英語を学ぼうと思えば、英会話学校を真っ先に探したものだが、今は状況が変わってきている。インターネットなどの発達により、オンラインでネイティブスピーカーとつながれば、一歩も外に出ることも無く、自宅での英会話学習が可能となったのだ。

こうして思いついた願いがすぐに叶ってしまう世の中になると、手間が省けるだけでは物足りなくなり、どうしても、【手間が省けることで生まれる相乗効果】も考えるようになってくる。特に、バブル期と違って、景気低迷にあえぐ日本では、時間の節約に加えて、無駄なお金は使えないという節約のマインドが消費行動に反映される。最安で最短で最大限の効果を合言葉に、費用対効果の追求が激しさを増している。
事実、昔ならば、欲しい商品があればお店で購入していたが、最近は、お目当ての商品をまずお店で下見してから、ネットで同じものを探して購入する人が増えているというのだ。そこには消費者心理のお得感をくすぐる様々な仕掛けがある。ネット購入ならば、時間を選ばずに買い物ができる。荷物を店舗から運ばなくてもいい。ポイントが貯まる。買いにくい商品もこっそり買えるなどその人その人にお得な理由付けがある。欲しいものをお得に手に入れるのは当たり前で、そこに更にプラスのおまけもなければ満足しにくいマインドになっているのだ。

英語学習も同様の付加価値が求められている。オンラインであれば、自分の時間割を組んで勉強できる。学習履歴が自動バックアップされるので、時間が十分に取れなくてレッスンを途中で中断しても、次回は中断した箇所から続けられる、といった時間の節約が可能である。その上、お気に入りの先生を選べるところも増えている。難しい箇所は分かるまでなんども繰り返すこともできる。さらに、オンライン辞書にアクセスでき、その場で分からないことも、他人の目を気にせず納得するまで調べられる。もちろん、移動時間も無ければ、教室までの電車賃もかからず、どしゃぶりだろうが、大雪だろうが、天候に左右されることなく、学習環境が保たれ、継続できる。従来の英会話教室では得られない自由な選択肢が揃っている。しかも授業料もお手頃で授業のクオリティーも高い。断る理由が見つけにくいほど、オンライン学習は進化を続けているのが現状だ。
順序と環境

どんなに早く手軽に情報が得られようとも、その情報を下地にアクションを起こさなければ、せっかくのいい情報も生きてこない。オンライン英語学習をコストパフォーマンス的にも優れていると選択しても、それをどう使っていくかの作戦がへなちょこでは得られる効果も期待薄だ。戦える武器を持っても、正しい戦い方を知らねば、負けてしまう。できるならば短期決戦に持ち込み、さっさと終わらせてしまいたい。

最初に例として挙げたセリーヌ・ディオンは、世界デビューに打って出ていくのに英語を武器に選んだ。21歳の時に翌年の22歳の時には英語のアルバムを出すという明確な見取り図を描いて、一年という短期決戦で目標を遂げた。

大工は無駄に釘を打たない。という言葉がある。

大工は家を建てる時に、まずは設計図を描く。出来上がる家の全体像を先に明確にイメージしてから、そこから土台を作り、コツコツと順序よく、積み上げ式に家を形にしていく。積み上げの順番を組む時は完成形から逆算してはじめれば無駄な釘打ちは無い。とにかく完成形を初めに決めて、正しい努力をする。この順番が大事なのだ。

どこに自分の果たしたい夢が届くべきなのか、その夢の到着地を先に決めてから動き出すのだ。そうしないと今の努力は無駄な釘打ちになってしまうのだ。だから、まずは、英語を話すことでかなえられる自分の夢の到着地を決めることが大事なのだ。
夢の到着地を決めてから、2013年3月31日までの90日で勝負する。
正しい努力を順序良く行うには締め切りから逆算する手が一番効果的だ。もちろん、その前にどんな自分になりたいかセルフイメージしなければならない。通常、語学を習得するには、毎日コツコツ取り組んで1年くらいは計画しておきたいものだが、今回はわかりやすく、日本人にとって仕切りなおしが始まる「スタートの春」4月1日をゴールと位置づけてみよう。この「スタートの春」をどうスタートさせたいのかしっかり思い描くのだ。1月から3月末までは1月は31日、2月は28日、3月は31日と計算すると、きっちり90日ある。この90日で結果を出すと心に決めたとしよう。
費用対効果をベースに、英語学習を時間とお金の両面から見た投資として考える。目標設定はことごとく数学的に行ってみる。つまり宣言の全てに必ず数を入れる約束にする。数字は自分を客観視するのに役立つからだ。
例えば、英語学習を2013年1月1日から、月額15000円の投資を3ヶ月、3月31日まで続けるとする。総額45000円を90日で割ると、日割りで、英会話学習への投資額は500円。一日、ワンコインで英語が学び放題だということになる。見逃してはならないのは、スクールへの交通費と移動時間が節約できる。英語ができる人と出来ない人が年収レベルで200万違うというデータを参考にすると、1ヶ月あたり、200万円÷12ヶ月=約月額16万6千円の収入差が生まれる。この月額16万6千円の1割弱の投資、1万5千円はエビでタイを釣る投資方法だと言える。
「スタートの春」の4月には昇給試験を受けても良し、転職しても良し、海外と繋がれる輸出入販売に乗り出してもいいかも知れない。自分を客観的に管理する為に、何事にも語る言葉に数字を差し込みながらブレずに方向付けした通りに正しい努力を続ければ、あなたもセリーヌ・ディオンのように、英語を媒体として世界に打って出る人間になれるのかもしれない。

【著者紹介】
溝江 達英(みぞえ たつひで)
カナダ ラヴァル大学文学部日本語科主任 

早稲田大学第一文学部、一橋大学大学院言語社会研究科を経て、カナダ ラヴァル大学文学部言語学科博士課程修了。言語学博士(Ph.D) 英語スピーチコンテスト優勝経験を持つ。英語に加え、仏、独、西、伊、露語も堪能な言語学者である。